書評 宿谷辰夫・宇田川芳江 編「難聴を生きる〜音から隔たれて〜」

読書を通しての学び

昨年、メニエールの再発で入院する前に購入した、岩波新書の一冊です。

この書籍は、前半に難聴者や聴覚障害当事者の生の声を手記としてまとめています。また3章からは、福祉・医療・教育といった側面から、当事者に対する支援についても詳しく解説されています。

恥ずかしながら私は、自分自身が当事者になりつつある現状に直面するまで、難聴や聴覚障害についての情報を積極的に集めていませんでした。右耳が聞こえないため、メニエール病の発症前から「聞こえにくくても聞こえているふり」をして笑ってごまかしたり、何かに集中しているふりをして「聞いていないフリ」をしたりすることでやり過ごしてきたのです。

このような後ろめたい「フリ」をすることは、実は多くの当事者が経験していることだと本書には書かれていました。「ああ、みんな同じなんだ……」と知り、心の奥底にあったわだかまりが少し軽くなったのを感じました。

後半の内容については、それなりに障害者福祉に携わっていながら、あらためて学ぶことが多く恥ずかしい限りです。

聴覚障害や難聴を抱える方は決して少なくありません。

しかし、身近な存在であるはずなのに、私自身がこれまで健聴者のコミュニティにいたこともあり、「どんなことに困っているのか」「どうコミュニケーションを取ればよいのか」「どのような支援があるのか」を十分に理解できていなかったことに気づかされました。

福祉の現場では「相手の立場に立って」と簡単に言われますが、左耳の聴力もじわじわと失われていく中で、当事者にしかわからない悩みや葛藤があることを、今まさに実感として感じています。

この本は当事者のリアルな悩みや実地に基づく支援方法が丁寧に綴られており、私にとって大きな学びとなりました。読み終えた後、わずかに希望の光が見えてきたように感じています。